こんにちは、カタツムリ系です。
さて、第一弾は、宮本輝さんの
錦繍(きんしゅう)です。
新潮文庫。529円。税込。
近くの一番安い、チリワイン
より、少し低めのお値段。
錦繍とは、美しい織物のことを
言うようです。
アマゾンのランキングでは
宮本輝さんの作品の中では
第2位の人気。
目次
BLばりの純愛
BLは、特に詳しいわけではありません。
ただし、あの、二次元特有の
登場人物な美しさは
この作品の親しみやすいけれども
気高い、この作品に
なんか通じる感じします。
この作品、映画化も十分イメージ
できます。
手紙のやりとりだけ ～アンチＳＮＳ？～
現在はSNS全盛ですが、皆さんは
気になる人や恋人とどんな
やり取りをされていますか？
やっぱり、LINEあたりでしょうか。
手っ取り早いしスタンプもある。
ついつい手が伸びますよね。
そうそう、ブロックもできますし。
ここでは、手紙のやりとりだけで
お互いの想いがつづられます。
まるで日本昔話のよう。
実際、昭和のお話です。
別れた夫婦の、ココロのリベンジ
ざっくり言うと、何一つ問題のない
家庭のご夫婦。
そろそろ赤ん坊が欲しいな
くらいに思っていいる時期。
突然、夫が重症を負い、聞けば
不倫相手に刺されたとのこと。
重い。
それが原因で二人は分かれますが
それは、お互いを不幸にする決断。
しかし、手紙のやりとりから
再生の決断を固めていく
二人のストーリー。
印象深いコトバの束
冒頭の
前略 蔵王のダリア園からりドッコ沼
へ登るゴンドラ・リフトの中で、
まさかあなたと再会するなんて、
本当に想像すら出来ないことでした
という文。
昔別れて音信不通となった夫婦が
偶然再会するには
あまりに出来すぎたシチュエーション。
ただし、ドッコとか、ゴンドラとか
濁音の連続する、音の効果も相まって、
全然、嘘っぽくありません。
テレビが映像の力の強さゆえに
言葉の「音」の力が
発揮しにくいのに比べ
この卓越した書き手は、
気持ちよく、読者を誘います。
なぜ二人は復縁できないのか
昭和ならではの、世間体もあります。
お互いがお互いのことを好きなことは
手紙からビンビン伝わるのに、
もどかしいこと、この上なし。
要は、もっと結婚という形式の力
が強かった時代に、結婚が壊れた
ことを気にするあまり好きと
改めて言えなかった、時代の犠牲者に
見えます。
あと、別れた時から時間が
経過していて、
ざっくばらんなやりとりが出来なく
なっていたのも大きい。
でも、もったいない。
こんなに、心の通じている二人も
探すのに難しいくらいなのに。
キーパーソン
元・夫が同棲をしている女性がいます。
無口で自分の意見もなさそう。
彼も少しケイベツ気味。
でも、元・妻との手紙のやりとりを
見せてから彼女の本性？が。急に
彼のお尻を叩き始めます。
言ってみれば、大阪ならではの
愛嬌のある愛のムチ。
新しい商売をはじめるために
あなたを飼ってきたのだと
言い始めます。そして軽いダメ出し。
素敵な素敵なツッコミです。
手紙というメディアの強力さと
今更ながらの大阪弁の愛嬌。
お笑いに代表されるように
書かれていて、淀みなく
ストーリーを進めるのに役立ってます。
最後に
繰り返しますが、100パーセント
の純愛。
でも、作者のお人柄か、くどくなく、
軽々とお代わりできる作品。
至福。
また、次回。
#宮本輝
#BL
#純愛
