カタツムリ系@エンタメ・レビュー (ポップ・サイエンスはデフォルト)

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【新しい物性物理②】電子は壁に染み込むという幽霊的存在。同時に超伝導を担うビジネスパーソン的やり手でもある💦そして鉄を目指す

こんにちは、カタツムリ系です。

この物性物理という分野は、ミクロの世界が担当らしいのですが、突然、宇宙論にもジャンプする、エネルギッシュなところも見せてくれます。しかも、学問の場に閉じこもることなく、産業界にも即効的に貢献する働き者であるとのこと。こんなやり手は珍しいですが、それはそれとして、このストーリーテリングの秀逸さから、いつのまにか読み進めてしまいます💦

新しい物性物理―物質の起源からナノ・極限物性まで (ブルーバックス)

新しい物性物理―物質の起源からナノ・極限物性まで (ブルーバックス)

 

出典はアマゾンさん。

前回の記事↓

 

 

核分裂核融合も鉄へ

P-42

原子核の反応には、核分裂、および核融合があることをご存知だろう。前者は原子爆弾や原子炉、後者は太陽エネルギーの源泉(中略)しかし、物理学から見ると、この二つは相補的 

分裂と融合が、お互いに補い合うなんて、また新しい局面ですね。

P-42

陽子や中性子は互いに独立でいるよりは、結合して重水素やヘリウム原子核を作った方が安定である。前にものべたように、もっともエネルギーの低い原子核は鉄である(中略)陽子や中性子は(中略)チャンスがあれば最後は鉄原子核に移行した方が安定だ。これに対し、重い原子核は適当な刺激で分裂し、エネルギーを出しながら軽くなって鉄に近づいて行く。

とにかく、エネルギーの高い原子核は不安定で、とにかく、安定的な状態に移行したがる性質があるよう。水が高いところから低いところに移動するのと、あんまり変わらなそうな気がします。核分裂原子核のエネルギーが高いものの「不安定さ」を利用し、核融合原子核エネルギーの低いケースの「不安定さ」を利用しているのだ、と。ほんの少し、しっくり来たような💦そして、

P-42

分裂も融合と放出エネルギーは巨大である。  

これは忘れてはいけないですね。そして、物質は「鉄を目指す」ことが印象的です。

 

トンネル効果という、ふざけているようでも、大真面目なロジック

P-52

古典的な粒子だと脱出不可能な壁でも、電子はスルリと通り抜ける場合がある。決して穴があいているわけでもないのにいつのまにか電子は外に出てしまうのである

「トンネル効果」。ネーミングもどこかホノボノしてます。割に無茶苦茶な現象で、激しく反応しても良さそうなものなのに、なんか、力抜けます💦

P-52

これは粒子の波動性に原因がある。壁があっても実は電子の波は壁の中に少し浸み込んでいる。そのために壁の外側に出る確率がゼロではない

なんと、電子は壁に染み込んでいると💦

この考え方を発表するときは、さぞ勇気が必要であったことでしょう💦

しかも、実地に生かした例があり

P-52

江崎玲於奈博士が発明したトンネルダイオードは、半導体の中にできた壁、これをポテンシャルの山というが、これを電子が通り抜けることを利用した素子である。

ダイオードは電流の伝達に貢献するパーツ。

ダイオード(だいおーど)とは - コトバンク

ちなみに、このトンネル効果は化学反応でも重要な役割を果たしており、

P-52

現代の最新技術の一つにトンネル顕微鏡というものがある

トンネル顕微鏡。なんか、力が抜けます💦

 

電気伝導こそ、物性物理の独壇場

P-112

電子物性は物性科学の華であり、その主役は行動力の高い電子

こうなると、物理と工学の差がもう無くなりそうですね。

 

その中でも最右翼が「超電導

コンピュータなんかで用いられる半導体でも電気抵抗はありますが、超電導では、電気抵抗はゼロ。恐ろしくすごいエネルギー効率ですが、それでこそ、リニアモーターあたりでの活用が見込めるらしい。そこでは、電磁誘導の法則を活用して、磁気が積極活用されています。

 

磁気と相対論

物性物理の懐の深さと言いましょうか、超電導で産業に直接貢献するエピソードが展開されるかと思いきや、一旦、アインシュタイン相対性理論に飛躍します。

P-158

磁気はアインシュタイン相対性理論に深い関係がある(中略)答えは簡単、磁気は電気の動きによって生じ、そして物が動けば相対論の対象となるからである。ただし、相対論ではすぐにパラドックスめいた話が現れるからご用心。

そのパラドックスさ加減、よく分かります💦

謎解きはと言うと

P-158

電子の速度に合わせて観測者が動いているとしよう。するとこの観測者から見れば電子が止まっているのだから電力ゼロ。つまり、磁場は発生しないことになる。静止している人から見ると、磁場があるのに動いている人から見ると磁場かない!

これはすごいし、なんか気持ち良くトリックを見せつけられた感じ。速さだけでなく、磁場まで、動いている人と、動いていない人で変わるなんて、なんと、自然の奥の深いこと😊

 

まとめ

以上のストーリーをまとめると次のようになるか、と。こうやってみると、科学者の方たちへのリスペクトがふつふつと湧いてきます💦

  • 核分裂核融合も、原子核の配置の安定性を求め、鉄へと向かいがち
  • 電子は壁に染み込み、物体が壁をする抜けるという離れ業(トンネル効果)の担い手となる
  • 電子は超伝導という技術を通し、リニアモーターカー稼働の担い手に
  • 恐ろしい💦相対性理論によれば電子の速度に動いている観測者から見れば、静止している人には存在する磁場が、観測者には存在しない💦

 

 

また、次回

 

#新しい物性物理

#核融合

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#電磁誘導