こんにちは、カタツムリ系です🐌
南極だか、大西洋の深海の海底火山だか、地球の辺境ばかり駆け巡る長沼教授↓
しかし、関心が360度的に拡散する教授のこと、今回は「脳」をカバーします。本書↓。
出典はアマゾンさん。
シャープな切り口かと思いきや、タイトルは「考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子」という、なんだかホンワカするテイスト。生命の起源を探るために「脳」をフル活用するのではなく、はたまた、「脳」に関する病気への新しい視点でもないようです。シンプルに「脳」を休ませてあげたい、という癒し系のアプローチとなっています💦
いずれにせよ、長沼先生、今回もきっちりエンタメだし、ポピュラーサイエンスとして仕上げて頂いています。
ちなみに、「脳(心)」関連の過去記事↓
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【目次】
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(ページネーションはkindleでの表記に従います)
あんまり脳や遺伝子を美化すると、彼らがしんどそう
No.3
理科の教科書で、こうした記述を目にしたことがあるかもしれません。
「人類の祖先は直立二足歩行を行うことによって、他の四足歩行動物と比べ、大きな脳を発達させた。そして自由になった両手を使い、高度な文明を築くことができた」
とくべつ欠点の見当たらない、脳の機能を丁寧に説明した素晴らしい記述のように思えるのです。しかし、そんな甘いもんじゃないとして、筆者は脳の現状をかなり懸念されています。
No.8
知性を発達させてきた五万年の歴史で、私たちの脳は、同時に致命的とも言える進化をしてしまいました
なんだか、どこかのSF映画の魔術師のようなコメント💦「脳」「致命的」「進化」という対立するワードが並んでしまっています。脳を軸として、この表現を再整理すると
No.9
私たちの脳は、「楽をすること」を忘れてしまったのです。
ということらしいのです。もともと「脳」は考えるために出来たものくらいに想像していましたが、そんな脳が楽をしたがるとは意外です💦
脳が楽をするとはどういうこと?
やりかけのゲームがあれば、眠くてもついつい夜遅くまでスマホを見るし、疲れていても、朝になれば出勤します。そういうシステム?!の中で、脳も身体もほぼ自動的に動いているように感じます。
ですので、正直、イチイチ、脳の働き、さらには、脳の疲れ具合なんて、考慮の対象に入っていません💦
しかし、これは生物学的に見ると、なかなかの無理ゲーらしいのです。脳にとってのマイナス行為。
No.15
他の動物はそんなことはありません。眠くなったら寝ます。疲れたら休みます。腹が減れば食べます。体の欲求に忠実に生きているのです。
脳の指令に基づいて、
- ただただ体の欲求に従うのではなく
- 知的に生きられるようになった状態
を、人間は高く評価してきた歴史を持っていますよね。人間が野蛮から抜け出し、文明化できた、というふうに、かなり肯定的にとらえられていた状態だったはずですが💦脳も、もっと褒められて然るべき?!
No.15
人間と他の動物との違いは、「脳」にあります。人間は先天的に体の欲求に背いてしまう脳のトラブルを抱えているのです。
もう、脳は、トラブルを抱えた状態なのですね。筆者によれば、
- 無理をする
- 疲れる
- 見栄を張る
- ストレスが溜まる
- 我慢する
といった現象が起こるのは、あまりに高度に発達した脳のせいだとか。そこで本書の登場ですが、本書の狙いは
No.15
「脳に振り回されずに生きる方法」を生物学的視点から考える
ものです。しかし、こんなに革命的?で、現代の流れにフィットすると思われる本書。どうして、ベストセラーにならなかったのでしょう💦脳科学者の茂木健一郎さんあたりもメディアにしょっちゅう登場されているくらいなのに。しかし「脳に振り回されずに」なんて、随分、脳に冷たい💦
疲れ果てる人間の謎
この「疲れ果てる人間の謎」というのは、本書の見出しをそのまま流用しています。なんか、ほんとに、人類が疲労の極致にいる感じが伝わります。それと言うのも
No.82
私(筆者のこと)は、深海や火山といった極限状況に生きる生物を中心に、地球に生きている様々な生物の生態を調査してきました。
筆者は、もともと、生命の起源の解明をテーマにされているそうです。深海や火山は地球黎明期の状態に近いらしく、そういったエリアの調査が、この壮大なテーマに役立つとの思いがあるそうです(再掲)↓
しかし、そんな極限状態で生活している生物には発達した脳は無さそう。なので、人間と比べるのも無理があるような、ないような💦
いずれにせよ、そうした調査の成果として得た結論の一つとして
No.82
自分から好き好んで自分を辛い状況に追い込む生物は人間だけであるようです
深海や火山の近くに住む生物のほうが、よほど過酷な状態に生きているような気もします。しかし、ここで強調されているのは、「自身の選択」のようです。過酷な状態に放り込まれた彼らも、過酷な状態なりに、楽な方を選んで生きているようですね💦
とすると、
- そんな原始的ではあるものの、自分を追い詰めないで生きていた古い時代と、
- そんな状態を捨てた今の時代
との分かれ目があることでしょう。いつ頃かと言えば、
No.101
スタンフォード大学のある研究者によると、脳というのは臓器がもっともいいコンディションだったときは、今から6000年前、文明ができたからだったとされています。
ということは、
- 文明とは我慢
- 文明とは無理ゲー
ということなのですね。とすれば、我慢も無理ゲーも偉大な気がしてしまいます💦 しかし、これはどんなキッカケだったのでしょう
No.107
文明の進化が、人間を自然から切り離し(中略)脳を自然に対して使うのをやめてしまった結果、その能力を人間関係に使うようになった
こういう「関係」という抽象的なものを使いこなせるようになったのは、やっぱり凄いとは思うのでが💦
まとめ
以下のまとめを見ると、人類滅亡も遠くない感じ💦(まぁ、そんなこともないのでしょうが)
- 生物は眠ければ寝るし、お腹が空けば食べる。体の欲求に忠実。
- 人間の脳は、文明を生んだが、自身を追い込む性格をもち、これは人間だけ。体の欲求に背いている
- そんなトラブルを抱えはじめたのは、6000年前
おまけ(「量子脳」というアプローチ)
別途記事にする予定なのですが、前掲の記事で取り扱ったペンローズという理論物理学者が、脳を量子で測ろうと試みたとか↓
それこそ、脳を疲れさせそうです💦
しかし、本書が脳に対して優しい視点を持っているのに比べると、「量子論」から「脳」を見ようとする本は、脳にとって、なかなかシビアな見方を提示しそうですね💦
また、次回。
#考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子
#長沼毅
#ポピュラーサイエンス